珠洲焼(すずやき)とは|石川 奥能登 美しく黒いやきもの|黒の町|中世と現代の器 Suzu Ware, Beautiful Black Pottery in Japan, Land of Black Beauty

志葉急須店です。珠洲焼(すずやき)のお話です。

当店では中国、ドイツ、スイスなど海外のお客様にも珠洲焼を販売しています。海外の方は、日本の他の産地では見られない薪で焼かれた黒い日本の器に魅力を感じています。

ナチュラルブラックビューティ、そしてレイヤー(層、深み)を感じると言われるSUZUYAKI。その特徴と美をご紹介します。

珠洲焼(すずやき)とは

珠洲焼とは、石川県の能登半島の先端 珠洲市で作られる黒い無釉のやきものです。陶器、磁器、炻器(せっき)の分類では炻器になります。石川県の伝統的工芸品です。

美しい黒の町 珠洲(すず)

珠洲は美しい黒の町です。石川県 能登空港から珠洲市へ向かう道、そして珠洲市のあちこちで目につくのは家屋の屋根を飾る麗しい黒いやきもの、瓦です。(能登瓦)

整然と並び、艶やかな光を放つ黒瓦と、ひとつひとつ味わいが異なる、温かく柔らかな珠洲焼の黒。珠洲を訪れると、この土地が生み出した美しい黒の世界に浸れます。

珠洲と言えば、珪藻土、縄文遺跡、新鮮な食材、米、海鮮、酒、塩、自然、海、風 … 歴史と文化、自然と陶芸 を愉しめます。道路が広く人が少ない、ドライブやサイクリングは快適です。

NHK BSプレミアム イッピン 珠洲焼特集 3度目の放送でした。
「手になじみ 目に楽しい黒の器~石川 珠洲焼~」
2020年08月04日 (火) 昼 12:00 ~ 12:30 (30分)

現代の珠洲焼(すずやき)

珠洲焼の特徴は、黒い、無釉、薪窯で焼いた、グレー緑ピンクなどの自然釉(薪の灰が窯の中で器にかかったもの)黒地に柔らかな色が深い層を作っています。

器を窯で焼く時、薪を燃料にすると、薪(松の木など)が燃えて灰となり、窯の中で器の上に降りかかります。それが美しい色彩や複雑な質感を生み出します。同じ形の器でも灰のかかり具合や受けた熱の違いで、一つ一つの器が唯一の物になります。薪を24時間ⅹ数日 燃やし続けることは大変な作業ですが、ガス窯や電気窯では出せない美があります。

写真は、珠洲焼作家の游戯窯 (ゆげがま) 篠原敬(しのはらたかし)さんの器です。その特徴をご覧ください。柔らかな黒、自然釉(灰)の色彩や質感、そのコントラスト。手に取るとずっと眺めていても飽きません。

中国のお客様の言葉を借りれば「美しいが、艶やかさとは違う、質朴で静かな美」と言えるでしょう。 (中国人宅 の珠洲焼をみる

中世の珠洲焼(すずやき)

中世の珠洲焼の 壺 や甕 が、渋谷ヒカリエの「珠洲焼展覧会」で見れました ( 2019年9月 )。その特徴は同じです。 黒い、無釉、薪窯で焼いた、自然釉。 そして壺、甕は 底が小さいという特徴が見られます。

上の篠原敬さんの急須の下部は、珠洲焼の原点のフォルム、小さく締まった底が再現されています。

底部に向けてのシャープさがあるラインは「ザ・珠洲焼」な感じです。

これらは12世紀~15世紀初のものです。写真はライトの関係で、色や自然釉がはっきりしませんが、実物から受ける印象は、やはり素朴で静かな美 でした。

より早い時期のものは黒というよりグレーな色合いです。原料の土に鉄分が多いと(そして窯の温度が高いと)より黒くなると説明を受けました。15世紀に近づくと、窯の温度も高く上げれるようになり、黒色の深いものがみられました。

鉄分が多い土は、還元焼成くなります(窯の中に酸素が少ない状態)。窯の中に酸素がある酸化焼成だとくなります。珠洲焼は還元焼成をします。

珠洲焼

上の四耳壺(しじこ)は黒々とした部分が多く、表面の光沢もあり深みがありました。(写真では分かりづらいです)

この展示品は、通常石川県珠洲市の珠洲焼資料館で見れます。最下部に資料館の情報を載せています。

東京国立博物館の珠洲焼(すずやき)六古窯との比較

東京国立博物館(トーハク)に珠洲焼と平安・鎌倉のやきものとの比較展示がありました(2019年)。比べてみると、はっきりと 珠洲焼の特徴 黒色底の締まった感じが見てとれます。どれが珠洲焼か分かりますか。

日本の六古窯となっているのは常滑焼、信楽焼、丹波焼、越前焼、瀬戸焼、備前焼です。(信楽はありませんでした)

六古窯 珠洲 猿投

一番左が珠洲焼です。トーハクの展示写真は下記ブログをご覧ください。

平成~室町時代のやきもの(大壺だいこ、大瓶おおがめの魅力)に堂々と珠洲焼が入っています。 下はトーハクの解説文です。

平安時代末の12世紀になると、産業と経済の発達にともなって古代須恵器や灰釉陶の生産技術を基礎に、各地で新しい窯場が台頭します。自然釉のかかった常滑・渥美(とこなめ・あつみ)、須恵器から展開した珠洲(すず)が中心となり、擂鉢や碗皿類のほか、壺や甕などの大型品が作られました。

東京国立博物館

500年の沈黙「幻の古陶」

実は、珠洲焼は15世紀に突然途絶えてしまいました。「忽然と姿を消した」「幻の古陶」などと言われていました。現代の珠洲焼は、約50年ほど前に復活したものなのです。 長い間知られておらず、現代その存在が明らかになり、そして復興をとげたのです。

2019年5月に 、復興までの道のりが朝日新聞にシリーズで特集されました。復興に人生の大部分を捧げた人、関わる人の様々な苦労や想い。それが分かるとても良い記事でした。

1998年発行 ほんやきもの史(監修 矢部良明氏)での珠洲焼の解説(下記抜粋)を、珠洲焼ファンとして嬉しく思っていましたが、存在を知られてなかったという点が気になっていました。

この六古窯の名声に隠れて、その存在を知られていなかった古窯に…(中略)石川県珠洲市の珠洲焼がある。

にほんやきもの史

ちなみに須恵器系の窯としては…(中略)なかでも、造形的にとくに抜きん出ているのは、やはり、石川県の珠洲焼である。その黒光りする素地肌鋭敏なエッジを利かせた造形と、重厚な作りの大壺は人をして感動させる迫力がそなわっている。

にほんやきもの史

この書籍発行から約20年後である2019年、上述の東京国立博物館での展示と解説を見て、研究により中世での珠洲焼の存在の大きさが、より明らかになったのだと感じました。

石川県珠洲市 珠洲焼資料館

珠洲焼資料館では、たくさんの中世の大壺や大甕の展示があります。壺に刻まれた様々な模様、刻字などをじっくり見ることができます。

珠洲焼資料館 前庭

以上、珠洲焼のお話でした。よろしければ 珠洲焼関連ブログもご覧ください。

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